2016年4月2日土曜日

新年度の中高生に薦めたい図書館




冒頭、何だか長いリストになってしまった。中高生に薦めたい話題の施設や、私自身が行ってみたい図書館等、おそらく良質な図書館揃いである。
ちょうどビジネスマン御用達の「ダイヤモンド」社のWebサイトで、「図書館の本当の活用法は小説を借りることではない」というタイトルの記事を見かけたが、まさにその通りである。ディズニーランドを擁する千葉県浦安市が図書館界でも有名だったように、かつて公立図書館は貸出冊数を競い、今日でも行政評価の指標となっている。しかし「ダイヤモンド」の論説委員は、清水幾太郎の言葉を引いて「自分を大量の読書へ向かわせる方法」を実践する場と述べる。ベストセラー小説なぞを借りている場合では無い、複数の館で司書やOPAC等を活用し、大量の調べ物をして成果物を仕上げよう、という奨めである。
貸本を咎める訳ではないが、この通り図書館をフル活用してほしい。尤も、中高生向きでない部分がある。一つは夜間利用。それから国会図書館東京本館。私にとってもマストな館であるが、満18歳以上でないと入れない(国会図書館分館の国際子ども図書館も「禁18歳未満」フロアがある)。それから中高生にはマストかも知れない自習室の機能。後述するが、本や知的空間をサカナとする談話や、補助学習の機能等も加わるかと思う。
まずは今をときめく「おしゃれ」図書館の代表格、通称TSUTAYA図書館。佐賀県武雄市が皮切りで、いつか行ってみたいとは思っていたところ、神奈川の海老名市にも昨年出来たので訪問してみた。駅前の喧噪から離れて再開発中の工事現場の脇をとぼとぼ歩き、やがて科学館みたいなドームを擁したグレーの建物が見えて来る。吹き抜けのおしゃれな空間で、建築好きな人でなくとも一見の価値あり。1階入口のすぐ脇にはスタバことスターバックスコーヒー店が広がり、本の他、高級文具の販売スペースもある。館内の買い物だけでなく貸出にもTSUTAYA「Tカード」が使用でき、iPadの無料貸出サービス(1日1時間)もあり、PC利用が珍しくない今時な施設である。訪問日は日曜で絵画鑑賞のワークショプがあったが、そうしたイベントも魅力だ。
中高生に肝心と思われる自習室も充実している。3階には公称90席で飲食物やPC類は不可の「学習室」があり、参考書を持ち込み集中して勉強している、または寝ている高校生が見受けられた。年中無休で午後9時まで開いているので、部活や塾の後も便利かも。花曇りの日は、すぐ外にあるテラス席も素敵だ。パラソル付きのテーブルで、ドリンク片手にゆったり読書や談笑が出来る。
しかし、中高生のお小遣いを考えると厳しい面もある。若い人がコーヒーをストレートで頼むのは珍しいと思うし、ホイップクリームやキャラメルソース等を追加するとドリンクだけで500円近くなってしまう。「スタバ席」は注文した人が対象であるが、確信犯と言いますか、人目に付きにくいカウンター席を占領していた高齢男性の他、そうした事情を知ってか知らでか、スマホを見せ合いながら談笑していた女子高生を、店員がやんわりと注意していた。
同様の風景は、仙台市民図書館にも見られる。2001年開館で建築界でも注目を集め、上下を貫く鉄骨のチューブが印象的な「せんだいメディアテーク」の3、4階に位置する図書館だ。3階の「閲覧席」(44席)は人気で、他のソファ席も含めて席取りが難しい上、開放的なスペースなので何となく落ち着かない。「スタジオ」等がある7階のラウンジは穴場であるが、事情は同様と思える。1階のカフェのメニューも、スタバほどでなくても安くは無い値段である。
最近作られた図書館には、乳幼児や小学生対象の長居出来るスペースが用意されている。例えば海老名市立中央図書館には、最上階に児童書の専用フロアがあり、1階から直通で、内装が可愛いエレベーターもある。しかし、それらは原則的に「親と一緒」が条件であったりする。この意味で、キッズと大人の狭間の中高生に、図書館は決して居やすく無い場所かも知れない。
そんな中、中高生向けのフロアを作った図書館もある。武蔵境駅を降りて目の前の、躯体も窓も卵形っぽいユニークな建築の「武蔵野プレイス」。武蔵野市立図書館の分室を再編し、図書館機能を核として生涯学習支援、市民活動支援、青少年活動支援を行う、目的そのものもユニークな複合施設となっている。で、ここの地下2階は、原則的に「19歳以下」の青少年専用フロアだ。図書館に当たるスペースの他、ダンスやクラフト用の貸出スタジオがあるが、最も特徴的なのが中央に広がる「スタジオラウンジ」である。建物全体が午後10時まで開いている上、このラウンジは「おしゃべりをする」場として堂々と位置付けられており、本当に制服のままの中高生が「だべって」いる。小学生も利用可能だが、午後5時で退出を迫られる。ロビーワークを行う専任スタッフもいて、そこはかとなく、時には厳しい目で子どもを見守っている。
司書の研修に便乗して見学させていただいたので、図書スペースにある青少年用図書をどうやって分類・管理するか、ばんばん質問が飛んでいたが、そうした図書は1万5千冊を超え、「ラノベ」等で良いだろうと手を抜いたりしない、芸術系の図書も揃えた本格的な選書である。「アフター5」(死語か?)のラウンジの様子も、ぜひ見学させていただきたいと思った。
建築や蔵書に魅力があり、知的な時間をゆっくり過ごせる青少年の居場所として、「まちづくり」の要素も見過ごせないと思う。大学生がほとんど暮らしていない町では、高校生は地域の魅力を作る大人の一人として見なされていると思う。行ってみたい図書館であり、もちろん一見さんOKであるが、良い意味で内向きな「町の図書館」を標榜する岩手の紫波町図書館や長野の小布施町図書館は、高校生を子ども扱いしない図書館ではないかと思う。前者は「公民連携」(猪谷千香氏の論説を参照)の構想そのものが伝説となった「オガール」にあり、後者は「小布施から世界を照らそう」等の発想の元で「テラソ」と命名され、実際に夜は行灯のように町を照らしている町立図書館である。農業等の地域の産業の発展(オガールには産直マルシェもある)や、伝統芸能の継承(テラソは「お肴謡伝承活性化プラン」の拠点となっている)を図り、若い人を含めた市民参加を促す仕掛けがある。
 尤も昔ながらの町の図書館も、中高生をさりげなく、温かい目で迎えている。春先に、神奈川の横須賀市立中央図書館を見学させていただいた。やや勾配の急な「読書坂」の上に立つ1980年代の建物は、初めてなのに懐かしさを感じさせる、良い意味で「よくある公立図書館」だ。特徴と言えば、アメリカ海軍の関係者の寄贈というペンギンブックスのようなペーパーバックの洋書でいっぱいの書架や、産業系の図書等も充実した郷土資料室であるが、読書室の充実も挙げられる。その名も「学生読書室」と名付けられた、簡素な机と椅子のみが並ぶ部屋があり、一緒に訪問した方が「浪人時代にお世話になった」と懐かしそうに話されていたが、勉強に集中できそうだ。「リフレッシュルーム」として飲食可能な場所もあり、そして3階の窓からの眺めは素晴らしい。
そもそも「町の図書館」の私なりの原風景には、実家近くの国立市公民館が根深い。高校生の頃から暇な時に立ち寄った。開放的な図書室は広くも、蔵書が多い訳でも無いが、当時の私に必要だった本がコンパクトな空間に揃い、あちこちに置かれた椅子で読めた。半地下には「喫茶わいがや」があり、300円ほどでコーヒーとクッキーがいただけた。学部生時代には障害者の青年教室に参加した流れで「わいがや」にスタッフとして入るようになり、車椅子できびきび指示を出すベテランスタッフと組んでコーヒーを淹れ、オーブントースターでクッキーを焼いた。国立市には今で言う特別支援教育の草分けの滝乃川学園があり、そこで作られた陶製の食器なので、手で丁寧に洗った。公民館の近くの「Dドーナツ」ではコーヒーをいただきながら高校生の勉強を見るアルバイトもしていて、私にとって公民館の図書室は、そうした青年教室や喫茶の活動やアルバイト、また学部等での学習で得た、青臭い知識や思考等を咀嚼するための、ニュートラルな場所になっていたと思う。
市町村の財政が逼迫した今日は合理的な機能や貸出数等の数量がエビデンスとして求められる時代であるが、ほっておかれる、おしゃべりできる等が約束される適度に知的な空間を、大人の入口に立つ中高生に残せると良いが。どんな施設や機能がほしいか、今時の中高生の意見を吸い上げる仕組みも備えたい。昨年は鎌倉市の図書館のツイートが話題となったが、新年度で気だるい中高生には、町の図書館に目を向けてほしい。何だか長くなったので、補助学習の機能は別の機会に述べたい。

*参考

1 件のコメント:

  1. 岐阜市司町に昨年7月に開館した文化複合施設「ぎふメディアコスモス」内の市立中央図書館2階に「YA(ヤングアダルト)専用席」という記事を発見。50席の中高生限定の専用席と、中高生優先の22席が設けられたとか。おしゃれな円形の配置と、手前に寝ている生徒がしっかり写っているのがいいですね! 優秀な司書さんが「第3の居場所(サード・プレイス)」と述べるのを良く聞きますが、まさにそれです。
    http://digital.asahi.com/articles/ASJ1L3GDXJ1LOHGB003.html

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