こども環境研究会関東第1回セミナー(2016年2月27日)参加記
「こども環境研究会関東」の旗揚げ会に当たる標記セミナーは、シンポジウムのテーマに「こどもの貧困と権利」を掲げた。
同会の大本の「こども環境学会」は「学会」を冠するものの、学際的な組織を標榜している。しかし、私には畑違いの世界だ(学会員であるが)。「まちの保育園」見学等の魅力的な集会に参加すると、都市計画系の研究者や建築関係者が目立つ。刊行物や配布資料は美しい画像が盛り沢山である。
昔、大学の建築学には二系統があると聞いた。一つはジャケットの襟を立てていたりする(!)おしゃれな公共建築系、もう一つは現場ではヘルメットで学会では着古したスーツの土木系であると。分かり易く(自虐的に?)解説してくださったのは後者に当たる研究者であるが、同学会は明らかに(先入観かも知れないが)前者に分類されるが、なぜ「貧困」がテーマか、そしてどのようにアプローチするかが大いに気になった。
そのような個人的な問題関心から、本学会の特性が生きたアプローチとして魅力を覚えたのは、3番目に登壇した建築家・藤木隆男氏の発表である。モダニズム建築で知られる建築家・ルイス・I・カーンの “Room” という言葉を借りて、一人ひとりの子どもの拠り所としての「居場所」を追求されている。子どもの福祉的生活空間のための「生活へのこだわり」も、「ハウスキーピング」として自然に実践出来るよう、設計の美学がある。
氏が設計された保育園や児童養護施設、母子生活支援施設は広々して採光が十分取られた吹き抜けの居間、子どもが隠れられる凸凹が多い保育室、空間に遊びがあって特に高年齢児の個性が生かされるような個室、デザイン性があるが機能的で掃除がし易そうなバスルーム等々、建築雑誌で紹介されるような(紹介されていると思うが)贅沢な空間である。発表後に、子どもの感想はどうか、という質問があったが、現状を観察すれば(棚に何が入っているか等)、非言語による設えの評価こそが雄弁ではないかと思われた。発表で使われた画像も、住む前で無く、実際に住んでいる様子であった。
他の2氏の発表は、私の職業柄、初めて聞く話では無かったが、貧困問題の最前線に立たれるお二人の貴重な発表であった。1番目は早稲田大学法学学術院・棚村政行氏である。民法、特に家族法がご専門で、協議離婚(無責任離婚!)が当たり前で家庭的養護も充実が待たれる日本固有の状況の改善に取り組まれている。夫婦別姓すら困難な日本で即時の法改正は期待出来ないため、市町村の制度運用の仕組みを変えていくことの重要性を述べられたことが印象的だった。実際に兵庫県明石市では養育費の立替払いを始めたそうである。
2番目に登壇されたセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの津田知子氏は、国際的に知られるNGOの国内事業部として日本の子どもの貧困問題に2010年から取り組まれ、折しも東日本大震災を経ることとなり宮城県石巻市や岩手県山田町等で、文字通り頭が下がるような実践をされている。
なかでも、2011年度より始められた給付型奨学金の話題が印象的であった。農業や水産の専門高校の生徒や要保護・準用保護児童生徒を対象とした返済不要の給付である。高校生に月2、3万程度のさほど大きな額では無いが、アルバイトを止めて部活動をしたり、修学旅行に気後れせず参加できたりして効果は十分のようである。また小1に1万、中1に4万を運動着や制服代として渡す「新入学応援キャンペーン」が今年2月より開始されたそうだ。
こうした奨学金についてフロアから(サクラかも知れない)質問があった。そもそも制服を揃える必要があるか(例えば「お下がり」という方法がある)、また、現金給付は「スマホ」購入等で子ども同士の「同調圧力」を助長するのではないかという質問と意見である。津田氏は、当たり前とされる物品が無いのは不登校を招くほど子どものスティグマとなる恐れがあること、また地方に行くほど同調圧力が強いゆえに「同じ」物品は必要という趣旨の回答を述べられた。情報も伝わり易く、洋品店で誰がNGOのお金で制服を購入したのかも噂になってしまうことも課題だそうだ。付け加えれば、日頃から強力な「ママ友」ネットワークを築き、学校のバザーや保護者会に早い時間から集まれる比較的余裕のある層でないと「お下がり」をゲットすることは難しいように思う。
文字通りの生命線ではないけれど、子どもの「最低限」の文化的環境を守るための住環境やモノ(文化財)は、この学会だから追求してほしいと思えた。お小遣い程度の仕送りを受けたりエアコンを付けたりしただけで援助が打ち切られてしまうように、「文化的な生活」の行政上の基準や社会的コンセンサスが朝日訴訟時代と変わっていないかも知れない今日、物理的、また美学的に良質な設えを知っている研究者や建築家の方には、高次だが不可欠な「最低限」を啓発し、具現化していただきたいと強く思った。
セーブ・ザ・チルドレンが受賞された石巻市子どもセンターは子どもの参画の重要性をアピールした施設であるが、支援者のネットワークづくりの拠点になり、生涯学習課の職員も関わっていると聞く。教育学の分野は物理的な支援ができずもどかしいが、制度面の、また社会教育ならではのアプローチを生かさなくてはならないと思う。
津田氏から「想像力」を持って貧困問題を考えてほしいという趣旨の発言があり、シンポジウム全体としても研究会の学際性が発揮される展開を期待させた。会場は、午後の自由発表を控えているのであろう学生が目立った。優秀で、貧困からは遠い生活環境で育った学生は少なくないと思う。ぜひ「上から目線」で無く、想像力を働かせて都市計画等の研究と実践に取り組まれてほしい。何だか上から目線の締め括りとなったが・・・。
津田氏から「想像力」を持って貧困問題を考えてほしいという趣旨の発言があり、シンポジウム全体としても研究会の学際性が発揮される展開を期待させた。会場は、午後の自由発表を控えているのであろう学生が目立った。優秀で、貧困からは遠い生活環境で育った学生は少なくないと思う。ぜひ「上から目線」で無く、想像力を働かせて都市計画等の研究と実践に取り組まれてほしい。何だか上から目線の締め括りとなったが・・・。
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